パエドルスの寓話 医者になった靴屋

 ある靴屋が、仕事がうまく行かなくなり、窮乏すると、やぶれかぶれになって、知らない町へ行き、医者をはじめた。そして、あらゆる毒を消す解毒剤であると称して、一粒の薬を売った。彼は大げさに宣伝したので、大変有名になった。ところが靴屋は、自らが重病になってしまった。これを不審に思った町の長が、彼の腕前を試してみることにした。彼は、水の入ったコップを用意させると、例の解毒剤と毒とを混ぜ合わせるふりをして、褒美をやるからこれを飲むようにと、靴屋に命じた。
 靴屋は死ぬのを怖れて、自分には医学の知識は全くなく、単に民衆が騒いだから、有名になったに過ぎないと白状した。そこで、町の長は、議会を召集して、市民に言った。
「君たちは、なんと愚かな過ちを犯したことか! 足に履く靴も造らせなかった男に、頭を委ねたのだからな」


 (日本語訳 Keigo Hayami)


参考:
古典落語『お神酒徳利』について

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