ポッジョの笑い話 丸薬作り

 ある町に、学識豊かな医者が住んでいた。彼には若い召使が一人いて、彼の指示した通りに、丸薬を作っていた。この若者は、師匠と長いこと暮らし、丸薬を完璧に作れるようになると、師匠の許を離れ、知らない国へと行った。そして、その地で知られるようになると、自分は、どんな病気にも効く薬を処方することのできる博識な医者であると人々に思わせた。そして、彼の許へとやって来る者には、必ずいつもの丸薬を与えた。

 ある日のこと、その土地に住む貧しい男がやって来て、ロバがいなくなってしまったのだと泣きついた。そして、どうか、ロバを見つけ出す薬を処方してくれるようにと懇願した。そこで彼は、いつもの丸薬を与えてこう言った。
「さあこの薬を飲むのだ。そうすれば、ロバは見つかるぞ」 こうして、貧しい男は丸薬を飲み、ロバを見つけるために、野原や牧草地を探した。すると、腹の中で丸薬が効いてきて、彼は排便せずにはいられなくなった。そこで、彼は葦の中へと入って行って、用を足してすっきりとした。するとそこに、ロバがいた。彼は喜び勇んで、町へと駈けて行くと、「医者からもらった薬を飲んで、ロバを見つけた」と宣伝して回った。このことが知れ渡ると、単純な人々は、本当は、丸薬を作る外は何も知らないこの男を、大変な賢者だと考えた。

 このように、多くの馬鹿者が、しばしば賢人とみなされる。なにせ、彼はあらゆる病気を治し、ロバでさえ見つけることが出来ると思われたくらいだから。

 (日本語訳 Keigo Hayami)


参考:
Type 1641 何でも知っている医者
古典落語『お神酒徳利』
グリム童話 KHM98 何でも知っている医者
日本昔話通観タイプインデックス 732A にせ占い---僥倖型
日本昔話通観19-378 占八兵衛
日本昔話通観16-359 鼻かぎ名人

古典落語『お神酒徳利』について

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