「消えうせろ! 飢えた者はどんなところへも入り込む。貧しい者は慈悲の心を失う。紳士よ! プリヤダルシャナに伝えよ。ガンガダッタは二度と井戸を訪れないと」

 ワニはそれが何のことかわからなかったので、その話をサルに尋ねた。するとサルは次のような話を語った。

四巻の挿話1 ヘビと間抜けなカエル

 ある井戸にガンガダッタという名のカエルが住んでいた。ある事情により、彼は同じ井戸に住む親族たちと敵対関係にあった。彼は親族に迫害されたので、以前井戸の水をくみ上げるために使われていた滑車をうまく利用して、なんとか井戸の外へと出て行った。
 彼がどうやって親類たちへ復讐してやろうかと考えていると、ブラックコブラが穴の中へ入って行くのが目に飛び込んできた。彼は目的を果たすためにコブラの助けを得ようと決心した。

 彼は穴の入口に立つと、ヘビに呼びかけて、自分の悲惨な境遇を事細かに説明した。するとヘビは彼と一緒に出掛けて行くことに同意した。そして二人は、先に井戸から出る時につかった滑車を使って井戸の中へと入って行った。

 カエルはヘビが姿を隠せるようにと、井戸の壁にある横穴を教えた。ヘビはその穴の中に住んで、カエルを次から次へと食べて行った。ガンガダッタは、ヘビが彼の復讐を成し遂げてくれるのを見て喜んだ。
 しかしヘビはガンガダッタの敵を全て食べ尽くすと、もっとカエルを提供するようにと要求した。そして、提供しないならば、ガンガダッタの家族を食べてやると脅した。

 ガンガダッタは、ヘビに助けを求めたのは、誤りであったことに気がついた。そして次の日、ヘビはガンガダッタの息子を食べてしまった。ガンガダッタは嘆き悲しみ、この井戸から出て行かないと、同じ目にあうと、妻に警告した。しかし彼が恐れていたことは、翌日現実のものとなった。今や生き残っているのは、ガンガダッタただ一人だった。

 ある日、腹をすかせたヘビが、ガンガダッタにもっとカエルを提供するようにと要求した。するとガンガダッタがこう言った。

「この井戸から出るのを許してくれるならば、大勢のカエルを連れてくることができるのだがね」

 ヘビは、ガンガダッタがすぐに戻ってくると約束したので、彼が井戸から出て行くことを許した。こうしてガンガダッタは滑車をつかって井戸から出て行った。

 それから何日も過ぎたがガンガダッタは帰ってこなかった。ヘビも心配になり、同じ井戸に住むカメレオンに、ガンガダッタの居場所をつきとめてくれるようにと頼んでこう言った。

「君はガンガダッタと仲のよい友達だ。彼に、食べたりしないから戻って来てくれと伝えてくれないか」

 カメレオンはガンガダッタに会うと、友達が君を待っているよ。と伝えた。するとガンガダッタはカメレオンに言った。

「彼の許へ行ったら伝えてくれ。私はもう戻らないとね」

 サルは話終わってから、私もガンガダッタと同じように、二度と君の家に行くことはないと言った。

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