イギリスの昔話 ジャックはどうやって幸を探したか  by Joseph Jacobs

 むかし昔のこと、ジャックという名の少年が住んでいました。ある朝、ジャックは幸を探しに出かけました。

 出発するとすぐにジャックはネコに会いました。

「どこへ行くんだい? ジャック」ネコが言いました。

「幸せを探しに行くのさ」

「じゃあ、僕もつれて行ってよ」

「いいとも」ジャックはそう言うと、「多い方が楽しいものな」と言いました。

 こうして二人は、ガンガラ・ゴンガラ・ガンガラ・ゴンガラ・と歩いて行きました。

 それから少し行くと、二人は犬に会いました。

「どこへ行くんだい? ジャック」犬が言いました。

「幸せを探しに行くのさ」

「じゃあ、僕も連れて行ってよ」

「いいとも」ジャックはそう言うと、「多い方が楽しいものな」と言いました。

 こうして三人は、ガンガラ・ゴンガラ・ガンガラ・ゴンガラ・と歩いて行きました。

 それから少し行くと、三人はヤギに会いました。

「どこへ行くんだい? ジャック」ヤギが言いました。

「幸せを探しに行くのさ」

「じゃあ、僕も連れて行ってよ」

「いいとも」ジャックはそう言うと、「多い方が楽しいものな」と言いました。

 こうして四人は、ガンガラ・ゴンガラ・ガンガラ・ゴンガラ・と歩いて行きました。

 それから少し行くと、四人は牡ウシに会いました。

「どこへ行くんだい? ジャック」

「幸せを探しに行くのさ」

「じゃあ、僕も連れて行ってよ」

「いいとも」ジャックはそう言うと、「多い方が楽しいものな」と言いました。

 こうして五人は、ガンガラ・ゴンガラ・ガンガラ・ゴンガラ・と歩いて行きました。

 それから少し行くと、五人はオンドリに会いました。

「どこへ行くんだい? ジャック」オンドリが言いました。

「幸せを探しに行くのさ」

「じゃあ、僕も連れて行ってよ」

「いいとも」ジャックはそう言うと、「多い方が楽しいものな」と言いました。

 こうして六人は、ガンガラ・ゴンガラ・ガンガラ・ゴンガラ・と歩いて行きました。

 彼らは、暗くなるまで歩きつづけました。そして、寝る場所はどこにしようかと考えました。そのうちに、一軒の家 が見えました。するとジャックは、ちょっと窓をのぞいてくるから、皆は大人しく待っているようにと言いました。する と、そこには泥棒たちがいて、金を数えていました。ジャックは皆のところへ戻ると、自分が合図をするまで、待ってい るようにと言いました。そして、合図があったら、出来るだけ大声で騒ぐようにと言いました。皆は用意万端整えていた ので、ジャックの合図が出ると、ネコはミャーミャー、犬はワンワン、ヤギはメーメー、牡ウシはモーモー、オンドリは コケコッコーと一斉に鳴きました。それは凄まじい大音声でしたから、泥棒たちは恐れをなして逃げて行ってしまいまし た。

 こうして皆は中に入り家にあるものを我が物にしました。しかし、ジャックは夜中に泥棒たちが戻って来るのではな いかと心配になり、寝る前に、ネコをロッキングチェアーに乗せ、犬をテーブルの下にやり、ヤギを二階に連れて行き、 牡ウシを地下室に連れて行きました。オンドリは屋根に飛んで行ました。こうしてから、ジャックもベッドにもぐりこみ ました。

 やがて、泥棒たちは、家の明かりが全て消えると、仲間の一人を家へやりました。泥棒たちは金を取り返したかった のです。しかし、家へ行かされた男は、真っ青になって戻ってきました。そしてとてもおびえた様子で、皆にこんな話を しました。

「おいらが家へ戻り、中に入って、ロッキングチェアーに座ろうとしたら、婆さんが縫い物をしていて、縫い針をおい らに刺しやがったんだ」
 皆さんは、お分かりですよね。そうです。それは、ネコだったのです。

「おいらは、金を探そうとテーブルへ向かったんだ。するとテーブルの下に靴屋がいて、千枚通しでおいらを刺しや がった」
 皆さんは、お分かりですよね。そうです。それは、犬だったのです。

「おいらは、二階へと上がって行った。するとそこでは、男が麦をついていて、おいらを殻竿でぶっ叩きやがった」
 皆さんは、お分かりですよね。そうです。それは、ヤギだったのです。

「おいらは、地下へと下りて行った。するとそこでは、男が木を切っていて、おいらを斧で、殴りやがったんだ」
 皆さんは、お分かりですよね。そうです。それは、牡ウシだったのです。

「だがよ。屋根のてっぺんのちっちゃな野郎がいなかったなら、おいらだって我慢できたさ。そいつは、『こいつ、 こっちに、来い。こいつ、こっちに、来い』と叫び続けやがったんだ」
 もしろん、それは「コッケ・コッ・コー」という鳴き声だったのですよ。

(日本語訳 Keigo Hayami)


Type 130 野営する動物たち(ブレーメンの音楽隊)
昔話タイプ・インデックス 572 馬と犬と猫と鶏の旅 (日本昔話通観28 稲田浩二 同朋舎)
Cf.昔話タイプ・インデックス 317 一つ屋の怪 

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